奈義の子どもたちがアンチ大魔王とことばバトル!

10月5日(木)、奈義小学校4年生を対象に、演劇的手法を用いたコミュニケーション教育の授業が行われました。講師は特定非営利活動法人PAVLICの田野邦彦さんと河野悟さんです。4年生は第1学期(7月7日)に行われた、平田オリザさんによる「コミュニケーションゲーム」に引き続き、今年度2回目の授業です。

今回の授業は「アンチ大魔王とことばバトル!」と題して、「なにもかもが嫌いだ!」というアンチ大魔王に向かって、子どもたちが自分たちの好きなものの魅力を伝える対話型のプログラムです。

まずは「好きな給食のメニュー」や「好きな教科」などグループで話し合って1つだけ決め、さらにそれぞれ好きな理由を5つ挙げていきます。

グループで活動するので、グループメンバーと一緒に考えることによるコミュニケーション能力の養成の面もありますし、自分たちではない他のグループの様子を見て感じたり考えたりすることによって、感覚や思考、知識や技能を得たり深めたりする面もあります

好きなものと好きな理由が決まったところで、アンチ大魔王の登場です。アンチ大魔王は河野さんが演じます。

 グループで、アンチ大魔王に自分たちが好きなものの魅力を伝え、相手の心を動かすための作戦を練っていきます。グループ内でどの順番で好きな理由を伝えれば効果的かなどを話し合っていきます。

 

発表です。グループごとにアンチ大魔王に自分たちの好きなものを発表していきます。しかし、アンチ大魔王にはなかなか伝わらず、好きな理由を書いた紙をことごとく破られてしまいます。アンチ大魔王を説得するのはなかなか難しそうです。

最後、「クラブ活動が好きだ」と主張するグループがアンチ大魔王とのことばバトル。「クラブ活動に参加すれば友達ができる」という子どもたちの主張に、「おれみたいな奴に話しかけてくれるかな……」と懐疑的なアンチ大魔王。しかし発表している子どもが「わたしが友達になってあげる」と言うと、観ていた子どもたちも大声で「友達になってあげる!」と応戦します。

アンチ大魔王の表情が変わってきて、「みんなが友達になってくれるんだったら、……クラブ活動好き」。最後の最後でアンチ大魔王に自分たちの好きなものを伝えることに成功しました。

教室内はまるで演劇を観ているような感動に包まれました。

今回のプログラムの主たるの教育的効用は、

    自分の考えを言語化する。

    相手に伝えるための言葉や言葉遣いを考える。

    なぜ?を突きつけられることにより自分の考えを深める。

    自分の考えが相手には理解されないことを体験する。

といったことが挙げられます。

自分が良かれと思っていても、他者には通じない、通じさせようとして表現を考えたり、考え方を深めたりして表現をさらに重ねていく、しかしどうしても相手に自分の考えが伝わらない、自分の考えを否定される、といった体験ができるように仕組まれているプログラムでした。

 

授業後に、講師の方々からは「この3ヶ月で大いに成長していて、他者との距離感は近過ぎることもなく遠くもなく、互いを尊重し合っているように感じられる。日々の生活での学びが順調に進んでいるのだなぁと感心した」との評価をいただきました。

このプログラム内容は小学4年生といった発達段階に到達しているからこそのもので、PAVLICの講師の経験からも、早くても小学3年生後半がギリギリの段階とのことでした。

人間関係の悩みは、大多数の人々にとって一生涯あり続ける問題であることが多いようですが、このような発達段階に適切に応じたプログラムを実施することによって、奈義の子どものたちが、人間関係をどのようにして構築していくかという学びや成長にとって、たいへん有意義で、大きな糧になることと痛切に感じました。

小学4年生の次回のコミュニケーション教育の授業は、年を越えて、1月30日(火)の予定です。また、小学6年生は12月13日(水)の予定です。

(黒瀬・菅原)